産後のママは大変な出産が終わったと同時に始まる子育て。
右も左もわからないと、退院後の生活を不安に感じる人も少なくありません。今回はそんな産後のママにとって強い味方となる「産後ケア」をご紹介します。
「産後ケア」って聞いたことあるけど…。という方も多いと思いますので、産後ケアってこんなに頼りになるんだよ!と解説していきます。
目次
- ○ 産後ケアってなに?
- ○ 産後の身体に起こりやすいトラブル
- ・子宮収縮の痛み・後陣痛
- ・会陰切開の傷の痛み
- ・悪露が続く
- ・乳房の張り、乳腺炎
- ・骨盤の歪み
- ○ 出産後のママに産後ケアが必要な理由
- ・身体はすぐに戻らない
- ・ホルモンが急激に変化している
- ・すぐに授乳が始まる
- ○ 産後ケアで受けられるサポート
- ・ママの身体の回復と健康管理
- ・赤ちゃんのお世話と育児サポート
- ・おっぱいのケアと授乳支援
- ・心理的サポート
- ・家族やパートナーのサポート
- ○ 産後ケアの種類
- ・宿泊型
- ・日帰り(デイサービス)型
- ・アウトリーチ型
- ○ まとめ
産後ケアってなに?
産後ケアとは、出産で身体に大きなダメージを受けたママと赤ちゃんのお世話のことをいいます。出産後、ろくに休息も取れずに慣れない育児が始まり、疲れてしまいがちなママのために、育児支援や心身のケアを行います。
産後ケアは行政や民間でも支援の輪が広がっており、母子の健康促進のために重要なケアとして注目されています。
また、産後だけの期間ではなく、サービスを提供している団体やメニューにもよっては授乳期間までなど広い期間でサービスを受ける事が出来ます。
産後の身体に起こりやすいトラブル
大変な出産の後は、ママ自身の身体にも傷や痛みが残ります。また、ホルモンバランスの変化により身体の変化が起きやすい状態になっています。
子育てを優先してしまい、自分の身体の事は後回しにしてしまいがちですが、ご自分の身体の事も気にかけてあげましょう。
子宮収縮の痛み・後陣痛
出産後の子宮収縮による痛みの事を「後陣痛」と呼びます。後陣痛は、大きくなった子宮を収縮させて、出産後に元の大きさに戻そうとする役割です。
赤ちゃんに母乳を与える時に出る、オキシトシンというホルモンによって子宮の収縮が促されるため、授乳中はよりお腹が痛みます。痛みが強い時はカイロや湯たんぽを当てるなどお腹を温めたり、楽な姿勢を取ると軽減することがあります。我慢できない痛みのときは病院を受診しましょう。
会陰切開の傷の痛み
出産の際に会陰が裂傷してしたり、会陰切開をした場合は、痛みがしばらく続きます。傷が無くても多くの方が、産後2日目までは痛みを感じると言われています。
痛みからひきつれるような感じに変化していき、徐々に痛みがなくなっていきます。
起き上がったり、歩いたりすると痛みを感じますが、動かないと産後の身体の回復が遅れてしまうため、ドーナツ型の座布団を使ったり、痛みを感じにくい体勢を取るなど、座面に傷が触れないようにしましょう。
悪露が続く
出産後に胎盤の一部や子宮にたまっていた血液、羊水、膣の分泌物などが混ざったものが「悪露」です。出産直後は真っ赤で、徐々に茶褐色になり、量もだんだん減って出産後1ヶ月頃にはほとんどなくなります。いつまでも続いたり、これまでより量が増えた、かたまりが出る場合は何らかのトラブルの可能性があるので、助産師さんに相談しましょう。
また、腹痛や発熱、出血が多量の場合は一度病院を受診しましょう。
乳房の張り、乳腺炎
産後、徐々に母乳の分泌量が増え、乳房が重たく、張ったような感覚になることがあります。授乳後も乳房が張って痛むときは、授乳間隔を短くするなど母乳をためないようにしましょう。痛みが続く場合は母乳が乳管で詰まって乳腺炎になる恐れがあります。乳腺炎は産後2~3週間あたりで発生しやすいと言われています。悪化する前に受診しましょう。
骨盤の歪み
分娩時に開いた骨盤は産後少しずつ戻っていきますが、自然に戻るまで3~4ヶ月ほどかかり、その間は不安定な状態になります。骨盤が不安な状態だと、全身のバランスが崩れてしまい。骨盤が歪んでしまったり、腰痛や膝痛になることもあります。産後1ヶ月~2ヶ月ほどはあまり無理をせず安静にし、骨盤ベルトなどでサポートしながら正しい姿勢で歩くように心がけましょう。
出産後のママに産後ケアが必要な理由
身体はすぐに戻らない
先述したように、出産は体力的に大きな負担がかかります。子宮や骨盤の回復にはある程度の期間がかかります。
回復のためには休息をとることが必要ですが、育児をしていると中々ゆっくりする時間が取れません。
少しでもママがゆっくりする時間を取るためにも産後ケアが必要になります。
ホルモンが急激に変化している
出産後はホルモンバランスが急激に変化するため、情緒が不安定になることがあります。さらに、出産後は授乳が1〜3時間おきになるため、出産直後から寝不足になりやすいです。
これらが重なる事で精神的に悪影響を与える可能性があります。
育児の相談や少しの間でも赤ちゃんを見てくれる安心感など、ママが精神的にリラックスできる環境が大切です。
すぐに授乳が始まる
赤ちゃんは生後直後から授乳によって栄養を摂取します。授乳でママの栄養を赤ちゃんに与えるので、ママ自身の営業が足りずに貧血になりやすいです。
出産直後は、ママも赤ちゃんも初めての授乳なのでうまくいくまでに時間がかかり、中々思うように授乳出来ない事や、乳首や乳房の張りなどで痛みを感じることにストレスを感じる人も少なくありません。
産後ケアで受けられるサポート
このように、産後のママはすぐに子育てを始めなければいけないにも関わらず、身体は疲れ切っており、ホルモンバランスなど精神面でも大変な状態です。
そんなママの助けとなる「産後ケア」では、実際にどんなサポートが受けられるのかをお伝えします。
ママの身体の回復と健康管理
これまでもさんざん書いてきた通り、出産後のママの身体は、体力を消耗している上に、ホルモンバランスが大きく変化していることで全身にあらゆる不調が出やすい状態です。
この時期は、バランスの良い食事や十分な休息をとることが大切ですが、中々思うように休息を取ることも難しいですよね。
産後ケアでは、食事の提供といった日常生活のサポートだけでなく、栄養バランスや身体を休める方法などのアドバイスを行います。
赤ちゃんのお世話と育児サポート
産後ケアでは、おむつ交換、沐浴、抱っこや寝かしつけのテクニックなど、基本的な赤ちゃんのお世話についてアドバイスが受けられます。○○教室のような多数ではなく、基本はマンツーマンで直接教えてもらう事ができるため、自分や赤ちゃんの様子や特徴に合わせて学ぶことができます。特に初産婦のママは、赤ちゃんのお世話に関することは全て初体験でとても不安です。相談やアドバイスが受けられる環境がある事は安心できますね。
おっぱいのケアと授乳支援
授乳は産後直後から開始しますが、初めからおっぱいが充分に出るという人はほとんどいません。母乳はおっぱいのケアと頻回な授乳を繰り返していくうちに、徐々に出るようになっていきます。赤ちゃん自身も最初は上手く吸うことが出来ません。
産後ケアでは、授乳の正しい姿勢や赤ちゃんへの吸わせ方、乳首のケア方法、必要時には乳房マッサージなど行います。
授乳は産後からママにとってよくお悩みで上がる1つです。早い段階で助産師さんに相談することで乳腺炎などのリスク防止にも繋がります。
心理的サポート
出産後は、ホルモンの急激な変化やまとまった睡眠が取れずに妊娠期に比べるとストレスを感じやすくなっています。ストレスを抱えたままの生活では、マタニティブルーや産後うつに特に注意が必要です。
産後ケアでは、そんなママの心のケアも行います。些細な疑問や不安を専門家に聞いてもらうだけで安心できますよね。産院から帰宅後に自宅でママと赤ちゃん中心の育児をする予定の人は、積極的にこのようなサポートを受ける事をお勧めします。
家族やパートナーのサポート
ママのサポートは病院や助産院だけが行っている訳ではありません。
周囲の家族やパートナーの協力も、育児にはとても大切です。
産後ケアでは必要に応じて、家族やパートナーに対してアドバイスをすることもあります。当院では出産前にパートナーの方も一緒に参加してもらう時間もございます。事前に専門家が説明することで、家族の中で一緒に赤ちゃんを育てる楽しさや役割分担について話し合うきっかけにもなります。
産後ケアの種類
産後ケアは、大きく分けて「宿泊型」「日帰り型」「アウトリーチ型」の3種類があります。
自治体が中心となり、地域の医療機関と連携している事が多いですが、近年では民間会社が提供している産後ケアサービスもあります。
費用やメニューなどもそれぞれ異なりますので、それぞれの特徴をみていきましょう。
宿泊型
宿泊型の産後ケアは、助産院や病院などの専門施設か、民間の施設や産後ケアホテルなどがあり、ママと赤ちゃんが施設に滞在してゆっくり過ごすことが出来ます。
日帰りと違い、1日を通してママと赤ちゃんの様子を見る事が出来るので、よりしっかりとしたケアができることが特徴です。
自治体が行っている場合は、宿泊できる日数が自治体により異なります。また、助成を受けられる場合が多いため、お住いの自治体の産後ケア事業を確認してからお申込みをするようにしましょう。
民間では、希望するだけ宿泊できますが助成制度はないため費用は高額になる場合があります。ただ、自治体とは異なり独自のサービスを行っている施設も多いことが特徴です。
日帰り(デイサービス)型
デイサービス型の産後ケアは、日帰りで施設に通いながらママや赤ちゃんのケアを受けます。一般的に朝10時頃から夕方15〜17時頃まで滞在し、ママのケア(育児相談や母乳ケア)や赤ちゃんのお世話(健康チェックやおむつ交換など)を行います。
こちらも宿泊型同様に、自治体により受け入れ日数や助成制度が異なりますので、必ず確認するようにしましょう。
アウトリーチ型
アウトリーチ型は、ママの自宅まで専門家が訪問してママや赤ちゃんのケアを受けるスタイルです。自宅に来てくれるので、赤ちゃんとの外出が不安な方や、体調が優れないママにとってはとても頼りになるサービスです。
産後に全家庭を訪問する乳児家庭全戸訪問事業とは別に、アウトリーチはママが希望した日に助産師や保健師が自宅に訪問し、育児相談や授乳指導などが受けられます。
自治体により回数制限等があるのでご注意ください。
民間の場合、個別のニーズに合わせたケアが希望するだけ受けられる一方で、行政よりは費用がかかる点に注意が必要です。
まとめ
大変な出産を終えたママの強い味方である産後ケア。
今回ご紹介したように、自治体や民間で様々なサービスが提供されています。
出産後すぐに始まる育児は、右も左もわからないまま進んでしまい、出産による身体的なダメージだけでなく、産後うつなどメンタルにも大きく影響を及ぼします。
困った時はもちろん、困る前から積極的に産後ケアを活用し、ママが安心して楽しく育児が出来る環境を整えていただければと思います。